「地域で生きる人々の思いや何気ない日常の喜びを伝えたい。情報発信を通じ地域の活性化に貢献したい」―。甲南女子大出身の女性は編集記者への思いをこう強調した。
地方自治体など地域の行政情報を発信する出版社で編集記者を務める。特集記事の企画や自治体関係者との折衝、記事や紙面レイアウトなど仕事は多岐に渡る。「取材の打ち合わせなど情報誌づくりの仕事は楽しい」と声も弾む。
地域を強く意識したのは大学のゼミで取り組んだ映画制作だ。ロケ地は兵庫県・淡路島。住民との交流や自然との触れ合いがきっかけである。映画監督でもある教授から指導を受け、卒業制作として仲間と一緒に作品を撮った。タイトルは「あすなろ家族」。自ら監督を務める。
主人公は東大阪市に住む45歳の主婦。家事をはじめ認知症である義母の介護や引きこもる息子の世話に追われる毎日だ。無理解な夫に嫌気がさし今の暮らしにも疲れ、とうとう淡路島に家出をして…というストーリー。家族とは、家庭と仕事を抱える女性の生き方とは何かを丁寧に描いた。
「シナリオの作成から撮影の段取りにシーンの打ち合わせ、役者さんへの説明やメンバーとの意見交換など、どうすれば皆の気持ちを一つにして作品を完成させるか。交渉力や伝える力が身に付いた」
淡路島のロケでは、美しい海や爽やかな風など自然の伸びやかさに心が洗われた。撮影には地元の住民も出演。作品は全国紙や地方紙をはじめラジオ番組にも取り上げられ、淡路島での上映会は立ち見がでるほど盛況だった。
「皆さんの温かい言葉は今も心に響いている。地域の方々との触れ合いがあったからこそ、地域情報誌を編集する仕事がしたいと心から思えた」
一方、就活は一進一退。上映会や学業の合間を縫っての活動となった。十分な準備ができないまま書類を提出し面接に臨むケースも。結果、卒業までに就職先は決まらなかった。
「でも、焦りはありませんでした」。映画制作と上映会での熱気。その場の拍手と歓声が「目標を成し遂げた」という自信につながったのだろう。卒業後は再び大阪新卒応援ハローワークでジョブサポーターの支援を受けながら就活を本格化させた。自己PRではシナリオの作成で培った文章力や周囲をまとめる協調性、諦めず取り組んだ気持ちの強さを訴えた。そして念願の編集記者に決まった。
「今は和歌山県の海岸沿いの町を担当しています。多くの地域は過疎、高齢化に悩んでおり、何とかサポートできれば。職場は編集の経験者が多く、女性も活躍している。新卒の社員として私も頑張らないと」。
記事で人々を勇気づけたい―。そんな決意が伝わってくる。
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2019年卒生の就活が本格化する中、既卒の就活生も自らのあすを掴もうと懸命に闘っている。大阪新卒応援ハローワークでは、そんな若者を集中支援し、求人の紹介や書類の添削、面接対策を連日、実施している。当所を利用して就職した若者はどんな思いで仕事を掴んだのか。その軌跡をお伝えする。
(学ハロ大阪新聞編集担当)
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