「就活は事前の準備が全て。なぜこの仕事がしたいのか、なぜウチの会社なのか。志望動機から自身の長所、短所までしっかり話せるよう備える。そのことに気付いたからこそ、意中の会社に内定できた」
大手高級焼き肉店の接客サービス職に内定した関西外国語大学短期大学部の女性は笑顔でこう振り返った。
接客業を志望したのはラーメン店でのアルバイトがきっかけ。「お客様が笑顔で食事を楽しむ姿に、やりがいを感じた」。店ではトイレの汚れがクレームになっていた。「目につかない場所こそ、きれいにしないと食事も美味しくないはず」と仕事前の掃除作業に力を注いだ。「接客は給仕だけではない。雰囲気も大切なんだ」。それに気付けた。
大阪新卒応援ハローワークは姉がすすめてくれた。英国風バーを展開する飲食店を受けたが不採用になり、不安が募っていた時期だ。
「面接対策もなんとかなるだろう。今の自分がどこまで通用するか、試してやれ、なんて。就活を甘くみていた」。面接官から「なぜこの仕事に興味をもったのか」「他店との違いは何か」。次から次へと深堀され、最後は答えられずに沈黙した。
友人は次々、内定し就活を終えていく。私はどうすれば…。そんな不安を抱えながら登録に足を運んだ。
窓口で驚いたのはJS(ジョブサポーター)がやるべきことを矢継ぎ早に提案してきたことだ。「履歴書の作成から添削に面接練習…。なるほど就活とはこんなことをやればいいのか」。 気持ちがストン、と落ちた。
JSから紹介された焼き肉店は以前、友人と食事した店だ。「高級感が漂う雰囲気。味も美味しく接客も丁寧だった。あー、こんな店で働きたい」
自身の強みは不撓不屈の精神である。中学・高校の6年間、ハンドボールで鍛えられた。ポジションはゴールキーパー。守備位置の指示など後方から大声を出し、チームを引っ張った。中学2年では初めて全国中学校ハンドボール大会に出場した。相手は岐阜県のチーム。結果は14対30。完敗だった。
「序盤から7、8点差を付けられ、気持ちを切り替えられなかった。相手ではなく自分の気持ちに負けたんです」。試合後、悔しさがこみあげてきた。
そこで学んだことは「自分ができるできないではなく、やるかやらないか、だ。その経験があったからこそ、今では何事にもひるまずに立ち向かえる」。そんな気持ちの強さが身に付いた。
大阪新卒応援HWでは、ESの添削を何度も受けた。「なぜこの会社か、なぜ接客業か。何度も書いては直される。結果、その過程が自分を見つめ直すことにつながった」。志望動機や自己PRは自ら働く姿をイメージしながら何度も声に出して練習した。
本番では「以前、受けた会社がなぜ不採用だったのか」と突っ込まれ、たじろぐ場面も。最終面接は緊張も最高潮に達したが「面接官の笑顔に引き込まれ、こちらも笑顔になれた。気持ちはすべて伝えられたと思う」。
数日後、内定通知が届いた―。
振り返って思うのは、就活はハンドボールと似ているということだ。
「練習と準備が本当に大切なんだと分かった。また、一人では戦えないことも同じだ。JSや友人、両親の支えがあってこその内定なんですね」
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「気持ちが落ち込んでいる時も、悩みを抱えている時も、テレビはいつも私を励ましてくれた。皆が元気になってくれる、感動してくれる、そんな番組を作りたい」
東京の番組制作会社に内定した武庫川女子大生は笑顔でこう強調した。同社は「しくじり先生」や「マツコの知らない世界」など人気のバラエティ番組やドラマを制作。自身も現在、在阪テレビ局でカメラマンのアシスタントとして夕方の情報番組に携わる。「バラエティとドラマの両方ができる会社が第一志望だった。諦めず就活を続けたおかげで、その夢がかなった」
就活は昨年12月から。東京キー局や在阪テレビ局を受けるもあっさり、不採用に。
「現実は甘くなかった。正直なところ、面接をなめていた」。その後、番組制作会社にシフト。大阪新卒応援HWで支援を受けながら、ESの添削や面接対策に力を注いだ。
面接での上京は47日を数える。猛暑の中、夜行バスで行き来したことも一度や二度ではない。東京にある大学のサテライトオフィスで仮眠をとり、面接に臨んだ。
「なぜ頑張れたかって?。やっぱりテレビが好きだし番組制作の仕事がやりたかったから。実は広告代理店も受けたが、志望動機が全く浮かばなかった。その時、確信したんです。私にはテレビしかない、と」
両親、とりわけ母の励ましが大きかった。「ディレクターになってマツコにいじられてや。楽しみにしているよ」。大阪―東京間の往復も「私は風邪をひいても熱は出ないタイプ。タフさは誰にも負けません」
面接対策では、番組のビデオを繰り返し見て研究した。「カメラワークからその図柄、出演者からそのコメントまで何が面白いのか、なぜ視聴者の目を引くのか。自分なりに詳しく考え、伝えた」
例えば、マツコが最後の晩餐にマーボー豆腐を食べたい、というシーン。有名な絵画・最後の晩餐のパロディである。「キリストの代わりに太ったマツコが絵の真ん中にいる。一つ一つのコメントは、一見アドリブのようだが、しっかりと作り込まれている。そんな発想は他社の番組にはない」。すると面接官から「キミはそこまで詳しく見てくれているのか」との言葉をもらう。その番組の担当のディレクターだった。
マスコミは狭き門。全滅も当たり前だ。だからこそ就活生に伝えたいのは何がなんでも諦めない気持ちの強さである。
「映像といえども企画の内容は文章で伝える。基本は言葉による表現力だ。添削ではJSから徹底的に文章を直された。それをもとに何度も話す練習をした。振り返ればこれに尽きる。合わせて志望する局の番組はもちろん、他局についても研究して欲しい。なぜ、どこが面白いのか。その比較が内定につながったと思う」
今は12月の内定式で披露する自己紹介の動画作成に勤しむ。「やりたい仕事だから全然、苦になりません」
テレビっ子が将来、どんな番組でわれわれを楽しませてくれるのだろうか。
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流した汗はウソをつかない。この夏、懸命に就活をした学生は今、実りの秋を迎えている。彼らはどんな思いで活動し内定したのか。その思いをお伝えする。
(学ハロ大阪新聞編集担当)
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